K氏によれば、これは植樹祭をやったスギ林だという。
そのとき「20年後の姿」という壮麗なスギ林の絵の大看板がつくられた。
あのときの絵と現在の実態とのあまりの違いに、K氏は怒りを覚えるのである。
原因をさかのぼって考えれば、本来は山麓住民のムラ山だったものが、明治初年の「山林原野等官民有区分処分」という世紀の大強奪によって「国家」や天皇にとられ、とくに東北地方は異常に広大な面積を奪われたため、いま戦後林野行政の失敗を手ひどく被ることになった結果だ〔注5〕。
本当は、東北の人々は国有林からムラ社会の領分をとりかえすべきであろう。
そうすれば、住民の意思に反してたかが営林署長あたりの小権力が伐るままに放任する状況もなかったかもしれぬ。
つまり東北住民は、北海道のアイヌと同じように、自分たちの生活基盤としてのムラ山を国家権力に奪われたまま現在におよんでいるのである。
さて、このような、地球の宝としての白神ブナ原生林へ、さまざまな自然保護の叫びに抗してまで林道を通すのは、なぜなのか。
林道をはじめ、日高中央横断道・知床横断道といった重大な自然環境破壊をともなう山脈横断道を取材してきた結果、そこに共通する一定の型が認められた。
まず過疎に悩む山麓の「地元住民がある。
何でもよいから、ムラが活性化することを、悲願としている。
しかしこの悲願は、横断道を通せば具体的にどういう効果があるといった明確な計算があるわけではない。
ただ「何とかしたい」という強い感情だけはある。
そこへ横断道路計画がもちこまれる。
推進する側は「地元の悲願を最大のよりどころに利用して、事前の環境影響評価(アセスメント)は可能なかぎりずさんな、形式だけのものにする。
そこには必ず土木建設資本がからみ、それをバックにする政治家と、その意を受ける行政責任者がいて、環境への影響など「ない」ことを主張する。
しかし現実には、すでに南アルプススーパー林道や知床横断道の先例が明示しているように、環境は確実・強烈に破壊されてゆく。
結局は、道路を「造ることそのもの、つまりは、何十億円という税金の浪費こそ「目的」だったことがわかる。
道がこわれたら、その補修と維持管理にまたいくらでも税金を食うことができるので、やはり「目的にかなう。
右のような共通する型に、白神山地を横断して青森・秋田を結ぶこの「青秋林道」もまた相当するのかどうか。
これが作業仮説だ。
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